【迷子猫・捜索記】チャチャを探した11日間/*捜索記・8日目〜11日目(最終日)*/

8日目

捜索記

2007/08/19(日)

朝・日中・夕方、いつもの捜索――成果なし。

れすきゅー隊BBSで頂いたレスに励まされ、以前、目撃情報があったコンビニ近辺を再度捜索・調査しに行った。

最近、チラシを配りだした一帯の住宅地には番犬が多く、猫は全く見かけなかった。

対して、コンビニ近辺は静かな環境。
コンビニ近くの住宅街にて、ちょうど出掛けようと出てきた住民の方がいた為、思い切ってチラシを手に、聞き込み。
「そういえば夜に猫の鳴き声がした」との情報を得られる。
前夜に呼びかけ歩きをした為、チャチャの呼応では、と思ってしまう。

夜になったら、ここでエサ置き待機をしてみようかと家人と相談。

同時に、印刷屋にてチラシ100枚の印刷を再依頼。

(依頼したチラシ原稿は、その日取得したフリーのメールアドレスを加筆。
結果的には、メール連絡は1件もなかった)

手持ちの残りチラシは、コンビニ周辺の住宅街に配布。

夜、出掛ける間際……、目撃情報が2件入った。

1件目――
場所は、逃走地点から直線距離で300m以上離れた、住宅地の間にある畑。
『子猫』と仰られた為、違うような気がしたが、念の為、家人と共に見に行った。
猫の姿は、全くなし……。
近辺は、車の往来がわりと激しい。
自宅周辺の他の猫ちゃんたちに追い立てられたとしても、チャチャがここまで来れるのだろうかとと……、疑問が生じた。

2件目は、いつも捜索している、水路際住宅近辺。
犬の散歩のついでに、詳しい場所を案内して下さるとの事で、明日早朝に待ち合わせをする事になった。

コンビニ近辺・住宅街でのエサ置き待機は、実行は難しかった。

殆どの家が、部屋の明かりをつけているのにカーテンも開け放したまま――という状態。
猫の姿を探す為に周囲を見渡すだけでも、否応なく部屋の様子が視界に入ってしまう事が判明した為……。

こちらとしても何だか覗き見みしているようで嫌だし、さすがにヒト2人がそんな場所に蹲っていたら住民に怪しまれるだろうとためらわれ――結局、その場から少し離れた空き地でやってみる事にした。

が、待機は15分ほどしか出来なかった。

(明日から仕事となる家人に、仕事の電話連絡が入ったのだが、運悪く携帯の電池が切れてしまった。ひとけのない場所だったので、私1人での待機は危険と言われ……、一緒に帰宅するしかなかった)

帰宅後、いつも通り――逃走地点〜自宅まで、名前呼び・お風呂の残り湯撒きをした。

9日目

捜索記

2007/08/20(月)

○早朝○
この日から、家人も私も仕事。
前夜、チャチャのゲージ用フリースの敷布を抱いて眠り、外に干した。

――チャチャに使用するタオルなどは、わりと頻繁に洗ってしまっていて、しかも逃走日はちょうど洗い換えをしてしまったばかりで、チャチャの匂いが残っていそうなものは何もなかった。
その代わりになるかわからないが、私の匂いをつけて、外に干しておけば少しは何か感じてもらえるだろうかと……、そんな意味合いで。
抱いて眠ったフリースは、目立ちやすい、黄色のものを選んだ。
(効果があるかは、全く不明……)

AM 5:30〜、昨夜に目撃情報を下さった方と落ち合い、目撃現場へ行った。

着いた先は、チャチャ逃走日から毎日訪れている、水路際近辺の――空き地。
チャチャ似のオス猫・Oくんをよく見かける場所でもある。
この子の首輪は、遠目から見るとチャチャの首輪と同じ色に見える。
「ピンクの首輪をしていたよ」と仰られたので、Oくんなのではないかな……、という気がしたが、丁重にお礼を述べて別れた。

私はそのまま、朝の捜索へ。成果なし。

AM 9:00〜。いつも通っていた動物病院へ、相談の電話をしてみた。
避妊手術を受けたメス猫でも、他の猫に喧嘩を仕掛けられて遠くへ行ってしまう可能性もあるか、と。
――ケースバイケース。答えようもない質問だと、自分でも解っていた。
謝罪し、見つかり次第またご連絡・伺います、と述べて、電話を切った。

○夜○
仕事から戻り、夜の捜索へ。
チラシ配布を行った場所・全域を囲む形の道沿いを、エサを手に、名前を呼びながら回った。
1km強の道程、時間にして1時間ほど……、私にとっては、かなりきつかった。
チャチャを探しているのか、チャチャを逃がしてしまった自分の贖罪的な代用行動なのか、わからなくなってきた。

自宅の集合住宅に辿り付いた時、隣家の住人の方が出てきた。

――このお宅は、正面に工事系の事務所があり、ポストは敷地内駐車場の奥に設置されていた。
事務所は、常時カーテンが引かれてひとけが感じられず、チラシを入れる為に敷地内に入って良いか躊躇われ……、チラシ配布を諦めていたお宅だった。

運悪く、手持ちのチラシを所持していなかったが、思い切って話しかけてみた。

(結果的には、この方がお話下さった事こそ、最も『チャチャ保護に結びついた』情報だった。
5日目、ペット探偵さんに無料相談させて頂いた際に言われた、「逃走近辺の住宅には、チラシを『くまなく』配布する事が必須」という言葉を、後になって、真に理解した)

1時間歩き詰め、汗だくだし、涙まみれの顔。
さすがに人様に晒せる姿ではないと感じたけれど、何か1つでも進展があれば……、そう願いながらの行動だった。

そんな情けない姿だったけれど、1度もお会いした事がなかった隣家の住人の方は丁寧に話を聞いて下さった上で――

「そういえば、日曜日の14時ぐらいに出掛けようとした時に……、あの畑の隅に猫がいて、連れに猫が道路に出てこないか見ていて、と言った覚えが……」

と仰られた。そして、
「猫ちゃんの写真、あるのよね? 見せて」とお尋ね下さった。

急いで帰宅し、チラシを持参。見て頂いたところ、首輪がなかった点以外、どうもチャチャに似ているらしい。

「きちんとお座りしてて、道路に出てくる気配はなかったけど――外に慣れていなさそうな猫ちゃんで、連れと危ないねって話した記憶が……」とも仰られた。

――チャチャだ、チャチャに間違いない、と咄嗟に思ってしまった。

その時間帯、14時過ぎの前、私はその畑の奥の、マンション地域にチラシを配りに行っている。
畑を通過するまで、私は通常の捜索時のように、チャチャの名前を呼んでいた。
もしかしたら、呼応反応かも? と思う。

畑の奥のマンション地域の住民は、動物好きの人が多いとの事。
「保護している人がいるかもしれない、ポスターを貼っておいたら」と助言を頂く。

――ポスターは既に貼っておいたが、チラシは数が足りず、半棟ほどしか配布していない。早急にチラシを用意し、全棟に配布しようと決めた。

夜は、通常通り、逃走地点〜自宅まで、名前呼び+お風呂の残り湯を撒いた。成果は、なし。

10日目

捜索記

2007/08/21(火)

○朝○
早朝、コンビニにてチラシをコピー。50枚。
手元に残っていたチラシと併せ持ち、畑奥・マンション地帯の、配布していなかった棟、全てに配布。
足を伸ばし、以前目撃情報があった――自宅から300mほど離れた畑へ行ってみた。
ちょうど畑の持ち主さんが作物の手入れをしており、声をかけてチラシを受け取ってもらった。
この辺も、猫は多いらしい。

帰り際――AM 06:30頃、逃走地点の畑〜自宅まで、名前呼びをした。
ふと、自宅建物に隣接する畑に、真新しい猫の足跡が……、随分とある事に気付いた。

家に戻り、窓からその足跡を観察。
廃屋側〜自宅建物前〜チャチャ逃走場所の畑へと、『U』の字で。
自宅建物前は、何度か行ったり来たりしているような形跡がある――ようにも思えた。

近辺には、確かに半野良・外飼いの猫ちゃんがたくさんいた。
しかし、チャチャがいなくなるまで、私はその事をあまり知らなかった。
畑に、こんなに足跡が残っているのも、今まで見た事がないような気がした。
『チャチャかな、やっぱりチャチャは近くにいるのかな……?』そんな風にも、思った。

AM 07:15〜
換気の為、窓を開けた。
チャチャ逃走地点の畑、廃屋側で――動くものがあった。
それが猫だと気付く前に、『チャチャだ!』と直感した。

窓から、100mほどの距離。
その猫は、子猫ぐらいの大きさに見えた。
チャチャにしては小さい気がしたが、毛並みは間違いなくチャチャのもの。
付近に、同じ色合いの子猫はいなかった。

「チャチャ!!」
大声で呼ぶと、その猫は、私がいる方を見た。
手を振って、再度名前を呼んだ。
猫は慌てて――廃屋近くの茂みに飛び込んでしまった。

畑を見張ってもらう為、家人を起こし、私はエサやら懐中電灯やら捜索用具一式を持って、廃屋地帯へ行った。

半野良子猫ちゃん2匹がいたが、チャチャはいない。
呼んでも、出てこない。
チャチャが飛び込んだ茂みへは、廃屋地帯から近付けない。

置きエサはいけないと教わってはいたが、チャチャにこの場を離れて欲しくなくて、いつも与えているカリカリと、(与えたことはないけれど)マタタビの粒1つを、チャチャが飛び込んだ茂み付近の廃屋に――ほんの少しだけ、2箇所に置いて、家に戻った。

○夕方○
携帯にPM 15:00頃の着信履歴があった為、仕事が終わってから折電。
8/19(日)に、目撃情報を頂いた――自宅から300m程離れた畑の近くのお宅からだった。

『家の敷地内で、似たような猫ちゃんが亡くなっていたから連絡をしたのだけれど……』と。
一瞬、心臓が止まるような思いだったが、先に家人にも連絡をして下さっており、家人のご家族が確認へと伺ったとの事。

結果――『オス猫ちゃんだったので、チャチャではない』。

安堵するも、その猫ちゃんは交通事故に遭ったらしい。
その子を探している家族もいたのだろうか、猫ちゃんもお家に帰ろうと頑張ったのだろうかと――とても悲しい気持ちになった……。
ただ、冥福を祈るしかなかった……。
(その猫ちゃんは、発見者の方がお庭に葬って下さったとの事)

○夜○
仕事から帰宅した後、エサを手に、廃屋地帯へ行ってみた。
置いたカリカリとマタタビは、なくなっていた。
子猫ちゃん達も、いない。

廃屋地帯〜逃走近辺〜自宅と、名前を呼びながら捜索。
深夜に、いつも通り――逃走近辺〜自宅を、名前呼びとお風呂の残り湯を撒いた。
いずれも、成果なし。

11日目・『保護日』

捜索記

2007/08/22(水)

AM 06:30。捜索の為、外へ出た。

家を出る前、何故か背中がピリピリした。
体調悪化が続いていて、手足の痺れがとれなくなっていたから、ついに背中にまでそれが生じたのかな、と思った。

今日は、『待機』をやってみようと考えていた。
20日(月)に隣家の方の目撃情報+昨日、私自身のチャチャ目撃と合わせ――どうにも、私が呼びかけを行ってから、少し時間を置いて、チャチャが姿を見せているような気がしたからだ。

いつも肩掛けバッグに捜索用具を詰めて持ち歩いていたが、この日はバッグを持つのをやめ、最低限の物だけを、身に着ける事にした。

・洗濯ネット、携帯電話(マナーモード)を、ポケットに。
・500mlペットボトルに、お風呂の残り湯。
ペットボトルのカバーに入れて、ジーンズのベルト通しに。
・手に、チャチャのご飯器。カリカリを入れて。
・チャチャが好きな、ウェットタイプのおやつ。
これはパッケージのまま。
現地で封を開けた方が匂いが出るかな、と考えた為。

向かった先は、昨日チャチャを見た畑――廃屋沿い。

ウェットタイプのおやつの封を空け、カリカリを入れたチャチャのご飯器に入れた。
そしてそれを手に、名前を呼びながら、チャチャが歩いていた場所〜飛び込んだ茂みを数回往復。
(片道?せいぜい6歩ほどの距離……)
そして、その場所でしゃがみ込んだ。

――静か、だった。
セミの声とか、風が揺らす葉擦れの音などが聞こえたけれど、動物の気配等は、全然感じなかった。
周囲の音に耳を傾けながら、ほんの時々、名前を呼んだ。
いつも通り、成果はなさそうな気がした。
時計を見たら、まだ5分しか経っていなかった。

『せめて10分、ここにいよう』
そう決めて、ふと、お風呂の残り湯を持ってきていた事を思い出した。
昨日、チャチャが逃げ込んだ茂み〜垣根沿いに、300mlほど、撒いてみた。
再びしゃがみ込み――名前を呼んだ。

それから、3回ぐらい名前を呼んだ時。

すぐ近くから、「ア゛ー」と、嗄れた猫の鳴き声がした。
――近所の半野良猫・外飼いの猫ちゃんだと思った。

でも、「チャチャ?」という度、「ア゛ー」という鳴き声がする。
むしろ、呼ばなくても繰り返しなき続けている!

声が聞こえる位置は、全く変わらない。
「チャチャ、どこ!?」
言いながら、声が聞こえる数歩先に移動し、垣根の隙間を探して、その奥を覗き込んだ。

すると……、
廃屋の壁際、なぎ倒されている垣根の――鳥の巣のようなその上に、キジトラ×白の猫が1匹、蹲っていた!!

キツイ三白眼の目つき。
首輪もないけれど、その猫は私を見て、大きく口を開けてなき続けている。

目つきが違うし、声はすっかり潰れていたけれど――それはもう間違いなく、チャチャだった!!

会えたのが嬉しくて、でもそんな居心地の悪そうな所に座っているのが痛ましくて。
そんな羽目に陥らせた事が何より申し訳なくて……、とにかく必死にチャチャを呼んだ。

でもチャチャは、ひたすら私を見て「ア゛ー」となくだけ。
垣根に、私が入り込める隙間はなく、チャチャにこちらへ来てもらうしかなかった。

ご飯を手の平に載せ、垣根の間からチャチャの方へ腕を伸ばし、
「チャチャ、歩ける? ご飯だよ、おいで!!」と必死に、でも優しく(……多分)呼んだ。

数回、同じ事を言うと、チャチャはゆっくり立ち上がり、手の上のご飯を見ながら、すぐ傍までやって来た。

10日ぶり、捜索を始めて11日目にして、ようやく間近で見れたチャチャの顔。
こちらへ近付く、少し俯き加減のその表情で、
本当に、紛れもなくこのコはチャチャなのだと……、確信が持てた。

チャチャは、手の上のご飯に鼻を付けると、勢い良く食べ始めた。
チャチャの両耳の裏側は、毛が殆どなくなっていて、数箇所に傷があった。

涙が滲んだけど、その時はまだ、泣かなかった。

手の上のご飯がなくなる前……、
チャチャが口にしたご飯を飲み込んだのを見計らって、空いている方の――左手で、チャチャの首根を掴み、垣根からこちら側へと、引っ張りあげた。

逃走前は、片手で持ち上げる事は難しくなっていたチャチャだったのに……、私の力で、軽々と持ち上げる事ができた。

膝の上に座らせ、片手でチャチャを囲い込むように抱っこしたけれど、チャチャは急に視界が変わった事で身を硬くした。
器からご飯をとり、「ご飯だよ、食べて」と鼻先に出すと、チャチャは周りを気にしつつも食べ始めた。

どうすればチャチャを、安全に・二度と逃がす事なく連れ帰れるのか――良い案が思い浮かばず、ひたすら器からご飯をすくい、チャチャに与え……、を繰り返した。

と、器から、ご飯がなくなる頃。
チャチャが私の膝から降りようと、身じろぎしだした。

チャチャは、何かを気にしているようだった。
必死になだめようと話しかけ続けたけれど、チャチャの動きは次第に激しくなった。

チャチャは、昨日チャチャが飛び込んだ茂みの方を見て、私の膝の上で立ち上がり、「シャー!」と威嚇の声をあげた。

――初めて聞いたチャチャの威嚇の声に怯んだけれど……、今回はしっかり、首根だけは掴んで離さなかった。
「チャチャ、ダメだよ、落ち着いて」
そう言いつつ、残りのエサを差し出したら、親指を本噛みしてきた。
痛かったけれど、声を殺して我慢した。

血が噴出した瞬間、チャチャは指から口を離してくれた。
けれど、チャチャは落ち着いたわけではなく、「ウー」といいながら、やはり膝から降りようと、腕の中を動き回った。

暴れられたら抑えきれない、どうしよう、家人を呼ぶべきか……、と困惑したところで。
ようやく、洗濯ネットを持参していた事を思い出した。

右手でチャチャのを首根をしっかり掴み、左手でポケットに入れた洗濯ネットを取り出す。
手は、ブルブルと震えていた。

チャチャを洗濯ネットに入れた事はなかったけれど、震える手で必死にファスナーを開け、チャチャの頭の上にかぶせたら――
チャチャは自分から、洗濯ネットの中に入ってくれた。

尻尾だけ出ていたので、膝の上でチャチャを横たわらせる格好にし――尻尾をお腹の方へ丸め入れ、ファスナーを端まで、しっかり閉めた。

もうこれで間違いなく連れて帰れる。その状況になって初めて、私は安堵もあって、泣き出した。

泣きながら、洗濯ネットに入れたチャチャを抱きかかえ、チャチャに色々謝りながら、家に向かって歩き出した。
チャチャはずっと、「ア゛ー、ア゛ー」とないていた。

少し暴れようとしたので、はおっていた半袖パーカーの内側にチャチャの頭を入れ、ひたすら道中話しかけ続け――

ようやく、11日ぶりに、チャチャと共に家に帰りつく事が出来た……!!

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